在りし日の駒井鵞静

ご 挨 拶
 若き駒井鵞静は、著書『かなの歴史』を出版するなど、かな書作家として順風満帆の歩みを進めていました。
 しかし、「綺麗な文字を書き飽きた」と語って、かな書道から近代詩文書作家としての道に踏み込んだのです。その後は、水を得た魚の如き活動を見せ、毎日書道展大賞受賞など、数多の輝かしい足跡を遺して行きました。
 その斬新な書壇での活動は、いつまでも続くかと思われましたが、突然書壇を去り数年間は書道史研究と執筆活動に専念して多くの著書を世に出しました。 
 もはや書作家としての活動は行わないのか、と思われた駒井でしたが、やがて一個展一面貌と言える個展を次々と開催し、書作家としての面目躍如たるものを見せ続けたのです。
『駒井鵞静遺墨百選』には、駒井の持つ筆から奏でられた様々な音色の作品を網羅してあります。高校教科書に採用された代表作を始め、生涯の作品から選りすぐった百点は、本書を手にされた皆さんの琴線を打ち振るわせずにはおかないと確信いたします。
 既成の価値を打ち破り、常に挑戦し、ひたすら生き抜いた鬼才の世界をご堪能いただきたいと思います。